世界最大コーシャ見本市「コーシャフェスト2017」出展リポート

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コーシャジャパン株式会社

今年もコーシャ市場に日本産食品をアピール

★2017年11月14、15日 / 於:米国ニュージャージー州セコーカス Meadowlands Exposition Center

冬の訪れも近いサンクスギビングデーを間近に控えた11月中旬、ニューヨーク中心部マンハッタンからほど近いニュージャージー州セコーカスのMeadowlands Exposition Centerで行われた恒例の世界最大のコーシャ・ビジネス見本市「コーシャフェスト Kosherfest 2017」に、コーシャジャパン株式会社が昨年に続いて今年も出展いたしました。

コーシャジャパンのブースには、ラビ・ビンヨミンをはじめとするスタッフと、コーシャ認定を受けた日本の酒造、種麹・総合微生物スターター、米製品などのメーカー様社員、日本産食品の拡販を応援する地元のラビらが集ってチームとなり、2日間にわたって、品質の高い日本産食品を世界のコーシャ市場に広くアピールしてきました。


【目次】
  ■今年のコーシャフェスト、来訪者の日本産食品への反応は?

   「世界一の長寿国」日本の知られざる伝統食品にバイヤーから熱い視線

  コーシャフェスト2017の全容
   ベジタリアンやビーガン対応の商品も

  ホワイトハウスを顧客とする大手ケータリング会社にセールス訪問
   ラビが直接説明することで、いっそうの興味を

  ニューヨーク市立大学ブルックリン校で日本の「麹」の講義を初開講
   「和食こそ世界一の健康食」であると理解したアメリカ人

  ニューヨーク市内のコーシャ・レストラン、グルテンフリー商品を視察
   あらゆる人々への対応をアピールする多業態な「コーシャ・レストラン」
   コーシャマークで相乗効果を狙うグルテンフリー商品

→参照:コーシャフェスト2016の出展リポート

今年のコーシャフェスト、来訪者の日本産食品への反応は?

「世界一の長寿国」日本の知られざる伝統食品にバイヤーから熱い視線

業者向けの見本市であるコーシャフェストでは、会場入り口で配布されるマップ&リストを持って自分の興味あるブースを効率よくまわる人が少なくありません。そのため、コーシャジャパンのブースにも最初から日本食品に興味があって訪れるお客様がいらっしゃって、「仕入れの最小ロット数はどれくらいか」など、かなり具体的な質問をいただいたりしました。

やはりみなさん注目されるのは、「世界一の長寿国」日本の伝統食品です。

とりわけ、これまで欧米で紹介されていなかった未知の食品の発掘を求めて訪れる、熱心なバイヤーのお客様も。また今年は、TPPやEPAの協定締結後を想定してのことなのか、アメリカよりも、カナダやオーストラリア、ヨーロッパなどからのお客様が多く来られた印象があります。「ビジネスは早い者勝ち」というわけです。

もっとも人気のあった商品は世界的ブームの「日本酒」。非売品のサンプルをどうしても欲しいと購入されたお客様もおりました。

また、今回初出展した日本の「麹」は、日本人の健康と長生きの秘密ということで、専門家の方から関心を持っていただきました。今回スタッフには、日本酒にほれ込み青森で杜氏の修行中のユダヤ系アメリカ人青年も加わり、日本酒や米麹の世界について熱く語るシーンも見られました。

一方、流れでブースに来られるお客様は、試食品やパンフレットを求められ、商品のラベルへの感想や「こうしたらいいのに」「こんな商品があったらいいのに」と率直な意見を残してくださる方もいました。これらのアドバイスも非常に参考になりました。

ブースは、外国人の方々にもわかりやすく、富士山やのれん、提灯、はっぴ、着物など日本を連想させるデコレーションや服装でお客様をお迎えしました。他のアメリカらしくショーアップされた華やかなブースの数々から見ると多少、地味かもしれませんが、”異色”という意味ではなかなか目立っていたのではないかと思います。

特に、ラビたちが率先して、日本食品の優位性を訪問者にヘブライ語でていねいに説明してくれたことが、功を奏した感じがします。コーシャ認証マークには、その国の農業や食品事情に精通しているラビの信頼度が重視されるからです。

↑小麦粉のパスタと見た目がそっくりなきれいな色のグルテンフリー米粉パスタや、米粉ペースト、日本酒、海苔、緑茶、麹などのサンプルを展示。「どこで買えるのか」と関心を示してくださったお客様も。

↑初出展の日本の「麹」を訪問者に説明する、種麹・総合微生物スターターメーカー・秋田今野商店の今野宏社長。

コーシャフェスト2017の全容

ベジタリアンやビーガン対応の商品も

コーシャフェストに出品される商品は、ユダヤ教徒向けのマッツァ(過ぎ越しの祭りの時に食べる種無しパン)といった宗教色の強い食品のほか、ワインやパン、お菓子、加工肉、スナック、製造機など多岐にわたります。ユダヤ教徒といえアメリカ人なので体格のいい方も多く、スイーツや炭水化物類の量の多さもアメリカンスタイル。

一方で、健康や、「自分が何を食べているのか」といった倫理性に気遣って、宗教上の理由以外でコーシャと併せてベジタリアンやビーガンなどの食事を実践する人々も少なくありません。

健康を気にする人とまったく気にしない人、その格差は日本人の目からすると極端にも思えます。会場にはビーガンの表示を掲示する商品やブースもちらほら見られました。

韓国ブースは面積を縮小したものの、昨年同様、健康志向に訴求して野菜を発酵させた漬物であるキムチなどを展示しておりました。ユダヤ教徒にキムチは意外ですが、これはなかなか成功しているようです。

生き馬の目を抜くニューヨークで、バイヤーがつねに世界中の真新しい売れ筋食品を探している、という動向がこんな点からも垣間見られるかと思います。

↑コーシャフェストの会場ニュージャージー州セコーカスのMeadowlands Exposition Centerの周辺。マリオットやホリデイインなどのホテル群、ショッピングセンターが集まった、千葉の幕張メッセを小さくしたような商業地区。

↑2日間の開催中には、世界各地からコーシャを扱う大勢の業者やバイヤー、プレス関係者ら食品のプロが訪れる。今年は1日目の方が訪問者が多かった。

↑軍関係者とおぼしき人々も。米国では政府の組織や、会議後のレセプションなどの食事にコーシャを配慮した食品が行きわたっている。

↑アルコールの禁忌がないユダヤ教徒には、お酒が大好きな人々も多い。ワインが中心だが、コーシャ認証を受けたウォッカやウィスキー、日本酒も人気。

↑過ぎ越しの祭り(passover)の時に食べる種無しパンのマッツァ。ユダヤ教徒にとってはなじみ深い食品で、チョコレートなどを塗ったりした商品も販売されている。

↑サンクスギビングデーに欠かせない七面鳥。こちらは加工品。

↑韓国の食品メーカーのブース。コーシャ認証を取得したキムチを展示。

↑こちらは中華系の調味料。実演で中華料理を提供。

ホワイトハウスを顧客とする大手ケータリング会社にセールス訪問

ラビが直接説明することで、いっそうの興味を

コーシャジャパンではコーシャフェストへの出展だけでなく、米国滞在中にラビを伴って弊社でコーシャ認証を受けた商品のセールス訪問を行ないました。

まずは、ワシントンのホワイトハウスを顧客に持つニューヨークの大手ケータリング会社「Great Performances」社へ、日本産グルテンフリーの米粉パスタや、砂糖不使用の甘酒などを持参し、バイヤーの方に日本古来の健康食品としての優位性を説明、試食・試飲をしていただきました。

ここでも、ラビ自らが商品を手に取って語りかけたことが大きく働いたようで、大変興味を持っていただけました。

アメリカの食品市場は巨大ですが、日本食品を売るためのターゲットとなるべきは、ヘルシー志向の特性から「高級食品市場」に限ってもよいように思います。規模が大きなだけでは商品が埋もれてしまいますし、セールスに赴く会社もその方面に的を絞った方が効率的です。

かといって必ずしも価格を高額に設定すればいいわけではなく、たとえば手ごろな普及品とワンランク上の高級品の2タイプの商品を用意したりする工夫が、購買層を広げるには理想的ではないでしょうか。

ニューヨーク市立大学ブルックリン校で日本の「麹」の講義を初開講

「和食こそ世界一の健康食」であると理解したアメリカ人

一方、アカデミックな場で日本食品の優れた点を発表すべく、秋田今野商店代表で農学博士の今野さんが、ニューヨーク市立大学ブルックリン校の栄養科学の授業にゲスト講師として招かれ、学生さんや教授たちに向けて日本の麹について英語による講義を行いました。

日本の麹については、意外にも海外の大学でこれまで講義されたことがほとんどなかったそうです。

単に平均寿命を比べると、世界1位の日本に対してアメリカは31位と、先進国の中では最下位に近い位置にあります(2016年調べ)。もちろん国の医療システムの違いもありますが、肥満がその原因のひとつともいわれます。

一方で、PRESIDENT Onlineによると、「食生活の改善も進められ、アメリカ人は「和食こそ世界一の健康食」であることを理解し、ふだんの食生活でも米や豆腐・味噌などの豆製品、魚介類を多くとるようになった。その結果、2011年には1977年に比べて心筋梗塞による死亡数が58%、ガンによる死亡数が17%も減少した。先進国のG7加盟国としては、唯一ガン死亡者が減っている国でもある」という実績データも発表されています。

麹には、食物の栄養を分解して消化・吸収を助ける役割や、吸収された栄養分をエネルギーに変える多くの酵素が含まれています。特に、味噌にがん予防の効果があるといわれることから、味噌を含む多くの日本の伝統食品に含まれる麹に関心を持ち、講義後に今野博士のところへ質問に来られる熱心な学生さんが何人もおられたのが印象的でした。

ラビ・ビンヨミンと今野博士。

ニューヨーク市内のコーシャ・レストラン、グルテンフリー商品を視察

コーシャフェスト終了後にはニューヨーク市内に移動し、コーシャ・レストランや、オーガニック、グルテンフリー商品を視察しました。

あらゆる人々への対応をアピールする多業態な「コーシャ・レストラン」

アメリカの大都市では食の多様化とともに、コーシャ認証を取得したレストランが和食、中華料理、インド料理など驚くほど多業態にわたっているのは、昨年の視察時にも感じたことでした。

レストラン側としては、単にユダヤ教徒からの需要があるだけでなく、競争の激しいニューヨークのレストラン業界で「食材に気遣い、あらゆる人々に対応している」アピールから、他店との差別化を図れるメリットがあるのではないかと推測します。

訪問した南インド料理レストランでは、店内にもヘブライ語の表示を出すなどの気配りを感じました。また日本からニューヨークに出店したユダヤ系アメリカ人オーナーによるラーメンショップ「Ivan Ramen(アイバンラーメン)」では、鶏だしで作ったコーシャ・ラーメンを提供しており、ユダヤ教徒以外のニューヨーカーからも支持を得ていました。

他に寿司などのコーシャ・レストランもあり、来訪外国人観光客対応として日本でも参考にできるのではないでしょうか。

↑マンハッタンの高級住宅街マレーヒルのインド料理店街にあるコーシャのベジタリアン向け南インド料理レストラン「Saravanaa Bhavan」。インド本国など世界各地にチェーン店を持つ。食材の品質への考慮を着目され、ユダヤ教徒以外のインド系ら健康に気遣うお客もやって来る。普通に食べておいしい南インド料理。

↑クイーンズのブハラ(ウズベキスタンなど中央アジア)・ユダヤ系移民が住む町で見つけたGlatt Kosher(ユダヤ教ハシディズム派の厳しい食戒律にのっとって調理された)の寿司と中華料理レストラン。

↑「Ivan Ramen(アイバンラーメン)」は東京世田谷区の芦花公園にあったユダヤ系アメリカ人のアイバン・オルキン氏がオーナーシェフを務めるラーメン店。ニューヨークに移転して大ヒット。本も販売されている。

コーシャマークで相乗効果を狙うグルテンフリー商品

一方、コーシャ認定食品には、オーガニックや非遺伝子組み換え(non GMO)、グルテンフリーなどの認証を一緒に付けた商品が少なくありません。大量消費社会の中で、アメリカでの食の安全への関心、体質改善や健康志向が根付いている実証ともいえそうです。

コーシャマークは、多数の競合商品から消費者が購入を選択する後押しとして威力を発揮します(逆に、率直にいえば、他が真似できないような個性的な大衆向け商品には必ずしもコーシャ認証が必要でないケースもあると思います)。

今回はグルテンフリー食品の専門店を訪ね、売れ筋商品などをインタビューしました。訪れたのはマンハッタンの高級住宅地アッパーウエストサイドにある「G-Free NYC」。7年前にオープンしたそうで、パンやパスタからお菓子などの幅広い商品を扱っておりました。

売れ筋は、パスタ、麺類、クッキーなど。「Whole Foods」などのオーガニック食材店などと同様、パンやピザ類は冷蔵、冷凍品コーナーで販売されており、米粉ととうもろこし粉を混ぜた商品が中心でした。

アメリカでも米粉自体やアジア風の麺(主にもともと米粉文化のある東南アジアのタイで製造)は販売されていますが、キリスト教徒やユダヤ教徒の多い欧米では、聖書に登場する小麦や、小麦粉を使った主食に古くから圧倒的ななじみがあり、100~150人に1人といわれるグルテン不耐症のセリアック病患者や、アレルギー患者対応のグルテンフリー食品は、セールス全体の中ではまだまだ少数派です。

特に、敬虔なユダヤ教徒は小麦を聖なる食べ物と考えているので、加工品(特にパン)として販売する場合はそのあたりに配慮を要します。

一方、コーンブレッドなどは別として、小麦粉の代用としてのとうもろこし粉は概して食味があまりよくないため、小麦粉やパスタなど小麦粉製品に近いテクスチャーを再現した米粉のみによるグルテンフリー商品には開発の余地があるのではないかと思います。

米粉、とうもろこし粉以外には、アマランサスやソルガム、キヌアといったアフリカや南米の雑穀を含有した粉がグルテンフリー商品として加工されており、これらは栄養豊富な健康食品としても認識されているので、相乗効果が期待されて人気があるようです。

アメリカのマーケットではほとんど見かけませんでしたが、大豆をはじめとする豆粉も、雑穀と同様に健康指向の消費者に訴えかける魅力があるように思います。

以上をまとめると、米粉にしろ大豆粉にしろ、海外に出ると日本人には日本ならではの食品に需要が寄せられますので、そのあたりをふまえてリサーチしながら海外向け商品開発をしていくと将来性を見込めるのではないかと思います。

そして、味にこだわる日本人ならではの味覚センスを発揮させることです。アメリカでヒットした「柿の種」などがその好例といえるでしょう。

↑アメリカのグルメスーパーには必ずといっていいほどグルテンフリー食品のコーナーが設けられている。冷蔵品としてまとめられている店舗も。上記は自然食やオーガニック、グルメフードを扱うスーパーマーケット・チェーン「Whole Foods」。

↑マンハッタンの高級住宅街のひとつアッパーウエストサイドにあるグルテンフリー食品の専門店「G-Free NYC」。ただし、グルテンフリー食品の専門店はニューヨーク市内にも数えるほどしかない。

↑こちらはグランドセントラル駅構内にあるフランス発のグルテンフリーのパンショップ「Nogulu」。

↑アメリカで販売されているきめの細かいグルテンフリーの粉類。米粉のほか、米粉ととうもろこし粉を混ぜたものや、じゃがいものでんぷんなどさまざまな種類が販売されている。値段は高価。

↑こちらはとうもろこし粉100%のイタリア産グルテンフリー・パスタ。見た目は小麦粉のパスタと遜色ないが、食味に改善の余地あり。コーシャ認証マーク付き。

↑日本のうどんやそうめんのようなスタイルで販売されているタイ製の米粉ヌードル。米粉麺はもともとタイやベトナムなど東南アジアが本場であり、ラーメン店でもグルテンフリー対応でこれらの麺が使われることがある。

↑玄米にアマランサスやソルガム、キヌアなどの雑穀を混ぜたグルテンフリーのクラッカー。グルテンフリーとコーシャ認証を取得している。食味がよく、「古代の穀物」というキャッチフレーズが、単にグルテンを摂取できない人だけでなくヘルシー志向の消費者の購買意欲もそそるものになっていて、興味深い。