世界最大のコーシャ見本市にコーシャジャパンが初出展

 15317976_329094617476151_6885513761061105855_n コーシャジャパン株式会社
★2016年11月15、16日 / 於:米国ニュージャージー州セコーカス Meadowlands Exposition Center

大統領選を終え、サンクスギビングデーを間近に控えた11月中旬、ニューヨーク中心部マンハッタンからほど近いニュージャージー州セコーカスのMeadowlands Exposition Centerで行われた、毎年恒例の世界最大のコーシャ・ビジネスの見本市「コーシャフェスト2016」に、コーシャジャパン株式会社が初出展。

「コーシャ認証」を得た品質の高い日本産食品を世界市場にアピールして、おかげさまで大きな反響を得ることができました。以下がその報告です。


【目次】
コーシャフードとは?
  コーシャジャパンの展示ブースで日本産食品を広くアピール
  試食の海苔巻き、日本酒・焼酎が大好評
  ユダヤ教徒はお酒が大好き
  今後の課題:日本の地方の優れた伝統食品を世界に

コーシャフェストの所見
  今年のコーシャフェストについて
  アジア諸国のコーシャ市場進出

米国市場をフィールドワーク
  ウォルマート 膨大な商品から安全な食品を選ぶ目印「コーシャ認証」
  多様化するニューヨークのコーシャ・レストラン
  ニューヨークに進出する意義 山口県の日本酒「獺祭」の軌跡

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コーシャフードとは?

「コーシャ(カシュルート、コシェルとも)」フードとは、イスラム教徒のハラールフードのように、ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」のこと。ユダヤ教の聖典には食べてもよい食品、食べてはいけない食品が記されており、敬虔なユダヤ教徒は、5000年前の昔からその規律を厳格に守って生活しています。

ユダヤ教徒の人口は、全世界で1400万人ほどとイスラム教徒に比べてはるかに少ないのですが、10億人以上を擁する欧米を中心にした市場では、ユダヤ教のラビ(聖職者)による厳正な審査に合格した「コーシャ認証」マークが、宗教に関係なく日本でいう「JASマーク」のような、商品品質のお墨付き的な存在になっています。

これは、コーシャがオーガニックなどと同様に、高品質で安心でき、地球環境に配慮した「エシカルフード Ethical Food」のひとつとして注目され、欧米を中心にした「意識の高い」消費者が食品を選ぶ目安にしているためです。

ユダヤ教の長い伝統が育んだ良質な食材と、おいしさ、自然を大切にしたナチュラルさが商品のイメージアップとなり、「コーシャ認証」マークがついていると売り上げが倍増するともいわれています。そのため、多くの世界的な食品会社がこぞって自社商品のコーシャ認証を取得し、商品にマークを付けています。

コーシャは、2020年までに世界市場で2500億ドル規模の急成長が見込めるとも試算されています。

そして、新しいコーシャ認証商品は、販路開拓のためにも見本市への出展が不可欠なのです。

コーシャジャパンの展示ブースで日本産食品を広くアピール

今回のコーシャフェストでは、コーシャジャパンは、会場の入口に近い好条件の場所にブースを確保することができ、会場で配布されたパンフレット(上写真)に「日本パビリオン」として掲載され、日本代表としてコーシャ認証を受けた日本産食品を広くアピールすることができました。

ブースでは、日本人スタッフ(試食品シェフ、商品説明担当)と、ユダヤ人スタッフ(来日経験があり、日本食に造詣の深いコーシャ専門のラビら)の計8名のチームで顧客の対応に当たりました。

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試食の海苔巻き、日本酒・焼酎が大好評

展示品は、日本酒(花の香酒造様、山口県・旭酒造様「獺祭」)、焼酎(JP酒販様「もったいない」)、日本茶(古賀煎茶本舗様)、海苔(山本海苔店様)、冷凍焼きいも。試食品コーナーには、コーシャ認証を受けた日本産あきたこまちと、野菜、ユダヤ教徒になじみの深い食材タヒニ(ごまペースト)を使ったベジタリアンの海苔巻きを用意し、日本茶、日本酒、焼酎と一緒に試食していただきました。

また、自然な甘さの焼きいもも、デザートのようにして召し上がっていただきました。

日本茶(グリーンティー)は米国ではまだそれほど知名度が高くないようで、「これは何ですか?」と聞かれることが多かったのですが、海苔巻きは「スシだ!」と、多くの方を見た目で引き付けることができました。

海苔巻きと日本茶、日本酒・焼酎をセットに楽しんでいただく提案を心がけたのですが、海苔巻きはすぐなくなってしまうため常に補充が必要な状況で、2日間でおよそ500食を作った計算になります。

オバマ大統領時代の国民の医療保険料の負担増や、食の安全性への関心から、米国は空前の健康ブームに沸いています。ヘルシーだと広く認識されている日本食は注目度も高く、さらに「グルテンフリー」であることも有利に働いたようです。

「ナチュラルでおいしく、高品質」といったコーシャのイメージと日本食は、相性もよいように思います。

魚を使わない野菜だけの海苔巻きは、ユダヤ教徒の方々にも安心して食べていただけることをアピールできました。米国で出回っている中国産の海苔との品質の違い、また日本産のもっちりとしたお米のおいしさをほめてくださる方もおりました。

ユダヤ教徒はお酒が大好き

そして、それにも増して熱気を感じたのは、日本酒、焼酎コーナーです。これは飲酒を禁じているイスラム教のハラール市場との大きな違いでもありました。

会場内ではワイン会社コーナーもかなり充実していて、ユダヤ教徒は、宗派に関係なくお酒が大好きな方々が多いことを実感。日本の文化に興味があり、「日本酒の銘柄をもっと知りたい」と質問される熱心なお客様が何人もおられました。

欧米では、和食とともに「SAKE」がブームで、アメリカ国内にもすでに日本酒メーカーが誕生しているほどなのです。

余談ですが、今年はじめに、ニューヨーク市内の超正統派ユダヤ教徒の人々の暮らす街の酒屋に入ったところ、われわれが日本人だとわかると、「サントリーのウィスキー”響”は最高にうまいね」と、彼らから声をかけてくれたことを思い出しました(”響”もコーシャ認証を取得済)。

黒づくめの服に髭姿で、厳しい戒律を持ち近づきがたい存在だった彼らとの距離が、お酒を通じて一気に縮まった思いがした、忘れられないうれしい体験です。

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今後の課題:日本の地方の優れた伝統食品を世界に

今後の課題としては、ブースに動画や実演展示を導入して、「安全でヘルシーな日本産の食品」「日本人ならではのきめ細かく、手間を惜しまない職人による製造過程」などを、もっと目立つように、具体的かつわかりやすくアピールできればと感じました。

ユダヤ教徒は健康に関心が高く、ナチュラルで体によい食品や、多少高価でも品質の高い食品を求める方々が多いので、たとえば日本酒、焼酎については、日本では「酒は百薬の長」と呼ばれ、ほどよい日本酒の飲酒は体にいいとされることをもっとアピールできれば、さらに多くのバイヤーを引き付けることができるのではないかと思います。

ブースでは「この商品はオーガニックか?」と、たびたび聞かれることがありました。コーシャに加えて、グルテンフリーやGMO(非遺伝子組み換え)、オーガニック認証がそろえば、現在の欧米の食品市場では「鬼に金棒」ですので、連携などを含めて前向きに取り組むべきであろうと思います。

また味噌などの発酵食品や、これまで欧米のコーシャ市場になかった未知の国の新しい商品にはつねに関心を持たれているようで、まだ知られていない日本の地方の優れた伝統食品などを、外国人にもなじみやすい形からもっと数多く紹介できればと思いました。

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コーシャフェストの所見


Wikipediaによると、コーシャフェストは1989年に初めて開催されて以来、年々規模を広げ、昨年は325の企業と6000人以上の参加者を集めたといいます。一般公開はされず、訪問者はメーカー、卸売業者、バイヤー、小売店、メディア関係者、フードブロガーなどプロのみに限られます。

今年のコーシャフェストについて

今年の正確な参加者数はまだ発表されていませんが、公式サイトによると今年の参加企業数は350と昨年を上回り、また日本をはじめ、韓国、インド、イタリア、フィリピン、スリランカなど、ユダヤ教の素地のない国からの初参加も増えたとのことです。

コーシャフェストの会場であるMeadowlands Exposition Centerは、東京ビッグサイトのような大展示場ではなく、意外とこじんまりとしていたのですが、たった2日間の開催にもかかわらず、常連とおぼしき出展者のディスプレイのお金のかけ方には目を見張るものがありました。

それだけこの2日間にビジネスチャンスが舞い込んでくる確率が高い、ということなのでしょうか。あでやかでおいしそうに目立つディスプレイは、さすが「ショービジネス」の国アメリカです。

また1日目は大雨で、オープン時はすいていたものの、午後からたくさんの人が詰めかけ、2日目は終日混雑し、商品を手に取る人々の真剣なまなざしが印象的でした。

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アジア諸国のコーシャ市場進出

他の出展者の中で印象的だったのが、韓国の企業が2社出展していたことです。2016年7月9日付の「The Time of Israel」紙によると、韓国政府は、2020年までに世界市場でハラールは5.2兆ドル、コーシャは2500億ドル規模の急成長を見込めるとして、両ビジネスの援助、拡大に乗り出しているとのこと。

コーシャフェストの韓国パビリオンでは、コーシャ認証を受けたキムチやお米のパスタ、塩などがかなり費用をかけて展示されており、その「本気度」がうかがえました。

韓流ポップスの世界戦略などにも見られるように、国内市場が日本の半分程度の規模しかない韓国は、官民あげて海外に自国商品を売り込むことに敏感です。アメリカでは、スリムで若く見える東洋人とその食品が健康的であると注目されていることに着目して、積極的に打って出ている点が参考になりました。

なお、中国、インドなどのアジアの大国はもっと早い時期からコーシャ・ビジネスに参入しており、スシの需要を見込んだ海苔など、ライバルのいなかった日本食品で認証を受けて大々的に拡販していたり、オーガニックと組み合わせるなど「目ざとい」戦略を繰り広げています。

中国は、汚染食品スキャンダルでのイメージダウン挽回のため、その生産力の高さを武器に米国のコーシャ市場に進出したそうですが、日本食品に関しては、どう見ても日本製の方がはるかに品質が高いので、日本人として惜しいというか、負けてはいられないなという気持ちになりました。

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米国市場をフィールドワーク

また、コーシャフェストの前後に、ニューヨーク市内を含めて何日間か、ざっくりと以下のような米国コーシャ市場のフィールドワークを行なってみました。

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ウォルマート 膨大な商品から安全な食品を選ぶ目印「コーシャ認証」

世界最大のスーパーマーケットチェーンといわれるウォルマート。ニューヨーク郊外にある店舗の敷地面積は広大で、ワンフロアに果てしなく並べられた米国産品、輸入品を含め商品の種類、数のあまりの多さに驚かされます。商品管理が行き届いてこじんまりとした日本のスーパーマーケットに比べると、ある種のカルチャーショックを覚えます。

売り場には、30枚入りで1ドル強という”激安”の食パンから、高級志向の黒毛アンガスビーフまで、あらゆる品質の商品がごっちゃになって売られており、健康によくない添加物や遺伝子組み換え(GMO)食品などがどの商品にどれくらい含まれているのか、ひとつひとつ見分けていくのは困難です。

米国では食品の安全に注意を払う人から、まったく気にしない人まで両極端。それゆえ「意識の高い」消費者が、山積みされた膨大な商品の中から安心できる商品を選ぶため、「コーシャ、オーガニック、グルテンフリー、ノンGMO」といったお墨付きの認証マークが重宝されるのがわかります。

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多様化するニューヨークのコーシャ・レストラン

ニューヨーク市内にはコーシャ認証を受けたレストランがたくさんありますが、それは中東・ユダヤ料理やアメリカ料理にとどまらず、今やイタリア料理やインド料理、日本料理など多岐にわたっています。またジューイッシュ・ジャパニーズといったフュージョン料理も誕生し、食の多様化が進んでいます。

レストランの店先には、コーシャ認証したラビの署名付きの証明書が貼られています。これは消費者が、ラビの経歴や所属する宗派などから信頼度を判断するためです。一般的には正統派や超正統派に属したラビの方が、審査が厳格で信頼度が高いといわれています。

スーパーマーケットのコーシャ認証マークもそうですが、何事も玉石混淆になりがちなアメリカならではの、合理的な”品質”の判別方法といえそうです。

一方ベジタリアン、ビーガンなどは、人々の健康志向に訴え、「ヘルシー」であるのと、コーシャとハラールの両方をクリアして集客が見込める業態でもあるので、顧客へのアピールのため、そう銘打った店が少なくありません。

日本食に関しては、コーシャ・ラーメン、コーシャ・スシといった専門店も。東京オリンピック開催を控えて、食の多様化を目指すべき日本も参考になりそうです。

ニューヨークに進出する意義 山口県の日本酒「獺祭」の軌跡

世界に向けた最先端の流行の発信基地であるニューヨークは、ユダヤ系人口の多い街でもあります。知識階級の富裕層が多くを占め、また「グーグル」や「フェイスブック」などに代表されるように、アメリカはユダヤ系が世界的メディア企業の上層部に多い国でもあるので、ハラールよりコーシャに重きを置かれている感があります。

ニューヨークで成功すれば世界に通用し、ブームは世界に波及するとはよくいったものです。そのような背景をふまえて、山口県の日本酒「獺祭」がたどった軌跡(→旭酒造・桜井和弘様「獺祭日記」~ニューヨークでの試飲会・イベントの様子)を参考に、米国ひいてはニューヨークを足掛かりとして、コーシャ認証取得で戦略的に世界市場を目指すとよいのではないでしょうか。